このガイドは、エンジニアを必要とする発注企業とエンジニアを提供する受託側企業を対象に作成されています。エンジニア単価における基礎知識から応用知識、相場を考える上で必要な事まで理解することができます。具体的には以下のような読者に最適です。
エンジニアを必要とする発注企業
受託側企業
エンジニア単価とは、請負の際の見積もり基礎情報としても使用されますが、エンジニアが提供する労働やサービスに対して支払われる料金のことを指します。時間単位(時間給)や月額単位(固定料金)で設定されることが一般的です。
一般的に、主に時給で計算されます。例えば、残業が発生した場合には、通常の時給の125%が支払われることがあります。また、深夜残業や休日出勤の場合には、時給の150%が適用されることもあります。ただし、これらの算出方法は状況によって変動するため、詳細は各企業に直接ご確認いただくことをお勧めします。
月に稼働する時間レンジ(140時間から180時間等)を設定し、その範囲内であれば月額固定料金が適用されることが一般的です。もし稼働時間が超過したり不足した場合は、基準となる時間(通常は160時間)で割った金額を過不足時間に乗じて追加または控除します。
エンジニア単価相場に影響を及ぼす8つの構成要素について解説します。
01役割・レベル
経験年数に基づいて単価を設定する例もありますが、個人差が大きいため、基本的には「詳細設計ができる」といった具体的な役割やレベルで整理するのが明確な基準になります。近年では、エンジニアの単価は、従来のようにシステムエンジニアとプログラマという2つの職種だけで表現されることは少なくなっています。現在の開発スタイルでは、役割や職種をより細かく定義し、表現することが一般的です。ニアショア機構では、ITSSをベースに、開発の進め方に応じた役割や職種レベルを具体的に定義したスキル体系を導入・活用しています。
02技術スキル
技術スキルとは、役割やレベルとは異なり、特定の開発言語や専門的な技術分野の知識や能力を指します。従来のシステム開発では、JavaやOracleといった開発環境が一般的でした。しかし、最近ではWebシステム開発において、GoやPython、AI、クラウドサービス(AWSやAzureなど)の知識がますます重要視されています。
03業務知識
システム開発では、業務知識が非常に重要です。業務知識とは、システムが使われる業界や分野に関する理解のことです。具体的には、その業界特有のプロセス、ルール、規制、そして顧客のニーズなどが含まれます。技術力だけでなく、こうした業務知識も持っていることが求められることが増えています。特に最近では、SAP S/4 HANAの導入において、業務知識を持ったエンジニアの需要が高まっています。
04企業サイズ
エンジニアの単価は企業の規模によって異なります。大企業は高いブランド価値と豊富なリソースを持ち、研究開発に多くの予算をかけられるため、エンジニアの単価も高くなります。一方、中小企業はリソースが少なく、ブランド価値も大企業ほど強くないため、コストを抑えた提案ができます。このため、同じスキルレベルのエンジニアでも、企業の規模によって単価が変わることがあります。
05商流の階層構造
エンジニアの単価は、商流の階層構造によっても大きく変わります。同じスキルレベルのエンジニアでも、階層が深くなると、それぞれの段階で間接マージンが追加されるため、単価が高くなります。最近では、偽装請負の問題もあり、改善の動きはありますが、まだ根深い問題です。
06需要と供給のバランス
市場価格は需要と供給のバランスで決まります。需要が高まると価格は上がり、供給が増えると価格は下がります。例えば、生成AIエンジニアの需要が高く供給が不足している場合、その単価は上昇します。逆に、供給が多く需要が少ない分野では単価が下がります。今後もエンジニアの単価は需要が強いため上昇が予想されますが、分野ごとに上昇の度合いは異なると考えられます。
07場所・地域性
地域も価格決定において重要な要素です。まず、海外のオフショア開発は円安の影響でコストメリットが出にくくなっています。一方、国内のエンジニア単価は、首都圏では高水準ですが、県ごとの価格差はそれほど大きくありません。都道府県別の最低賃金が参考になりますが、ニアショア機構の調査では、最低賃金が安い地域でも、システム会社の数が少ないと競争が少なく、価格が安くならないこともあります。また、常駐での開発では、1席あたりのコストが各部門に振り分けられるため、これも考慮が必要です。
08契約形態
契約形態によってエンジニアの単価は変動します。これはエンジニア単価において見落とされがちな要素ですが、理解が非常に重要です。具体的には、次の順に契約コストが高くなります
開発内容に応じて適切な契約形態を選ぶことが重要です。各契約形態には異なるメリットとデメリットがあるため、プロジェクトの性質やリスク管理の観点から判断しましょう。
エンジニア単価の基本から応用までを詳細に解説しました。8つの構成要素を理解し、自社のニーズや状況に合わせて活用することで、効率的かつ効果的なエンジニアリソースの確保が可能となります。
エンジニア単価を抑えつつ、優秀なエンジニアを調達するために即効性の高い重要なポイントは以下の通りです。
発注企業や受託企業がこのガイドを参考にすることで、双方が納得のいく契約を結び、ビジネスに役立つことを願っています。