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RAG構築の具体的なステップとプロセスとは?課題や対策なども解説

  • ソフトウェア開発
  • 2025年10月31日

生成AIの導入が進む中、多くの企業が自社の固有データに基づいた正確な回答が得られないという課題に直面しています。

その課題を解決するものが「RAG(Retrieval-Augmented Generation・検索拡張生成)」です。企業が保有する膨大なナレッジを最大限に活用するための現実的なソリューションです。

本記事では、企業の担当者がRAG構築を検討および推進する上で理解する必要がある概要や構築プロセス、成功のための重要なポイントなどを網羅的にわかりやすく解説します。

私たち一般社団法人日本ニアショア開発推進機構(ニアショア機構)は、首都圏を中心とした発注企業と地方にあるシステム開発会社をつなげる「Teleworks」を運営しています。

高品質のシステムをこれまで数多く提供してきました。テレワーク普及に伴い累計受注額は増加しており、相談実績は500件以上です。

このような実績がある私たちだからこそ知る、現場のリアルな声を紹介します。

なお、海外ではなく国内の地方企業に発注して、コストを抑えながら安全にRAGシステムの構築をしたい企業様は、私たちニアショア機構(サービス名は「Teleworks」)にご相談ください。

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RAG(検索拡張生成)とは?

RAG(Retrieval-Augmented Generation・検索拡張生成)とは、大規模言語モデル(LLM)が、学習済みの知識だけでなく、外部の最新情報や特定のドキュメント(企業の社内データ、最新ニュース、データベースなど)を検索し、その情報を参照しながら回答を生成する技術のことです。

例えば、RAG構築をおこなうと、以下のようなメリットを享受できます。

  • 社内問い合わせ対応(FAQ自動化、ナレッジ検索)
  • 契約書や法務文書のレビュー支援
  • 研究開発情報の整理および検索
  • 顧客対応の高度化(CRM連携)
  • 特定ドメインに特化した専門情報へのアクセス

RAGなら、ハルシネーションリスク(偽情報生成リスク)の低減や最新情報の反映などを実現可能です。

さらに、外部にデータを送らず社内あるいは閉域網で処理できるため、データセキュリティやプライバシーの維持につながります。

RAG構築の具体的なステップとプロセス

RAGシステムの構築は、技術選定だけでなく、プロジェクト管理、データ戦略、運用計画など、多岐にわたる要素を考慮する必要があります。

ここでは、計画段階から運用まで、プロジェクト推進者が押さえたいステップを具体的にお伝えします。

1.企画・要件定義とデータ戦略

RAG構築プロジェクトを開始するにあたり、まず何を達成したいのか、どのような課題を解決したいのか、具体的な目標設定やシステムの機能の定義が重要です。

この段階では、RAGの対象とする社内データを特定し、その量、形式、質、更新頻度、そしてセキュリティレベルを評価します。

プロジェクトの方向性を定め、初期段階でのつまずきを防ぐための重要なステップです。

まずは有用かつ大規模にならないユースケースを選んでスモールスタートできるようにすると、後々の手戻りを防げます。

2.技術スタック・アーキテクチャ設計とPoC(概念実証)

要件定義に基づき、RAGシステムを実現するための具体的な技術要素(ベクトルDB、LLM、フレームワークなど)を選定し、システム全体のアーキテクチャを設計します。

特に大手企業では、既存システムとの連携やセキュリティ要件を満たす設計が求められます。

小規模なデータで実際にRAGを構築して実現可能性や性能を検証するPoC(概念実証)の実施は、本格開発前にリスクを低減し、技術的な課題を早期に発見するために不可欠です。

具体的には、検索精度やハルシネーションの有無、質問に対する忠実度などの回答の品質・所要時間は検証しておきましょう。

3.開発・実装とデータインジェストパイプライン構築

設計したアーキテクチャに基づき、実際のRAGシステムを開発・実装します。

特に重要なのは、データの収集、前処理(分割、ベクトル化)、そしてベクトルデータベースへの格納を自動化・効率化するデータインジェストパイプラインの構築です。

データの質がRAGの応答精度に直結するため、このパイプラインの堅牢性と正確性が求められます。

ユーザーからのクエリに対して、関連情報を検索し、LLMが回答を生成するコアロジックの実装もこのステップでおこないます。

4.テスト・評価・改善

システムが完成したら、機能や性能、応答の品質を徹底的にテスト・評価します。

関連性の高い情報を取得できているか、ハルシネーションはないか、回答は正確で自然かなどを、定量的な評価指標と定性的なフィードバックの両面から検証しましょう。

評価結果に基づき、チャンキング方法、Embeddingモデル、検索ロジック、プロンプトなどを継続的に調整および改善してください。

このプロセスを踏むことで、RAGシステムの精度と実用レベルを高めていきます。

5.運用設計・デプロイメント・保守

開発・テストが完了したRAGシステムを、実際に利用可能な本番環境に移行(デプロイ)します。

大手企業では、安定稼働、セキュリティ、スケーラビリティ、そして既存システムとの連携といった観点からの設計が重要です。

デプロイ後も、システムの稼働状況を常時監視し、問題発生時に迅速に対応できる保守体制を構築します。

また、RAGの鮮度を保つために、対象データの更新に合わせてベクトルデータベースの内容も常に最新に保つ仕組み(データ更新パイプライン)の運用が不可欠です。

大手企業が直面しやすいRAG構築の課題と対策

RAGは有効な技術の一つで、ぜひ導入を検討したいものです。

しかし、特に大規模かつ多様なデータを扱う大手企業においては、いくつかの特有の課題に直面する可能性があるため、注意が必要です。

課題を事前に把握して対策を講じることが成功の鍵となるため、わかりやすく解説します。

データの量・質・多様性に対応する必要がある

大手企業は、文書、データベース、ログ、Web情報など、膨大かつ多様な形式のデータを保有しています。

これらのデータがRAGに適した形式で整理および構造化されていない場合、データの収集、前処理、インジェストが大きなボトルネックとなります。

データの質が低いとRAGの応答精度も低下します。

この課題に対しては、包括的なデータ棚卸し、クレンジング、そして多様なデータソースに対応できる柔軟なインジェストパイプラインの構築が不可欠です。

検索精度と生成品質の最適化をおこなわないといけない

RAGの性能は、いかにユーザーの質問に関連性の高い情報を正確に「検索」できるか(Retrieval)と、検索した情報をもとに自然で正確な回答を「生成」できるか(Generation)にかかっています。

適切な情報が見つけられなかったり、LLMが情報をうまく活用できなかったりすると、RAGの価値は低下します。

チャンキング方法の工夫、高性能なEmbeddingモデルやリランカーの導入、そして効果的なプロンプトエンジニアリングによって、これらの精度を継続的に高める必要があります。

パフォーマンスとスケーラビリティを検証する必要がある

本番環境で多数のユーザーが同時に利用する場合や、対象データ量が継続的に増加する場合、RAGシステムの応答速度や安定稼働が問題となる可能性があります。

特に検索部分(ベクトル検索)は、データ量が増えるほど計算負荷が高くなる傾向があります。

この課題に対処するには、高速かつスケーラブルなベクトルデータベースの選定、効率的なインデックス設計、そして適切なインフラ(クラウド環境など)の選定と設計が重要です。

ロードバランシングやキャッシュ戦略もパフォーマンス維持に貢献します。

セキュリティとコンプライアンスを守らないといけない

RAGで社内データや顧客データなどの機密情報を扱う場合、情報漏洩や不正アクセス、個人情報保護法などのコンプライアンス違反のリスクは重要な課題です。

とりわけ大手企業は厳しいセキュリティ基準が求められる傾向にあります。

この課題への対策としては、アクセス制御(認証・認可)、データの暗号化(保存時・転送時)、閉域網でのシステム構築、詳細な監査ログの取得と監視などが挙げられます

また、セキュリティに関する国際標準(ISO 27001など)を満たす開発プロセスや、信頼できる外部委託先の選定が欠かせません。

大手企業は「自社開発」と「外部委託」のどちらを選ぶべき?

RAG構築の複雑さと専門性を考えると、自社ですべてを開発するか、外部の専門会社に委託するかのいずれかを検討する企業がほとんどです。

ここでは、その判断基準とそれぞれのメリット・デメリットを解説します。

自社開発のメリット・デメリット

RAGシステムを自社内で開発する場合、最大のメリットはシステムへの完全なコントロールと、そこで培った技術やノウハウを自社に蓄積できるところです。さらに、特定の要件に合わせた高度なカスタマイズも可能です。

しかし、AI/ML、NLP、分散システム、ベクトルDBなどの専門知識を持つ優秀なエンジニアを確保および育成するにはコストと時間がかかります。

また、開発期間が長期化したり、初期投資が大きくなったりするリスクも伴います。そして、プロジェクト管理の負担が大きくなることも考慮する必要があるでしょう。

外部委託のメリット・デメリット

外部の専門開発会社にRAG構築を委託する最大のメリットは、専門的な知見や技術力を持つリソースを迅速に活用でき、開発期間の短縮やコスト最適化が期待できるところです。さらに、自社のITリソースをコア業務に集中させることも可能です。

デメリットとしては、適切なパートナー選定の難しさや、仕様の正確な伝達や情報共有におけるコミュニケーションコスト、そして委託先を通じた情報セキュリティや機密保持に関する懸念が挙げられます。

つまり、信頼できるパートナー選びが重要ということです。

また、どこまでを外部委託するかは、かけられるリソースによって判断が分かれるところですが、少なくともRAGについて理解している人を社内にも確保しておくことは念頭に置いておきましょう。

外部委託先を決めるときのポイント

外部委託という選択肢を採る場合、プロジェクトの成否は、どのパートナーを選ぶかにかかっていると言っても過言ではありません。

大前提として、RAGやその関連技術に関する十分な開発実績があるかは必ず確認すべきです。過去にどのような業界で、どのような規模のRAGシステムを構築したか、具体的な事例を提示してもらいましょう。

次に、大手企業の厳格な基準を満たすセキュリティ体制を備えているかも重要です。ISMS(ISO 27001)などの第三者認証の有無や、開発プロセスにおけるセキュリティ対策について具体的に確認してください。

さらに、要件定義から設計、開発、そして運用まで、プロジェクト全体を円滑に推進できる高度なマネジメント能力を有しているかも見極めるべきポイントです。

そして、専門的な内容をわかりやすく説明し、ビジネス部門の担当者とも密なコミュニケーションが取れるか、評価しましょう。報告・連絡・相談の体制が明確であるかは、プロジェクトをスムーズに進める上で欠かせません。

また、開発して終わりではなく、リリース後の保守や機能改善、データ更新といった継続的なサポート体制が整っているかも、長期的な視点での重要な選定基準となります。

つまり、単に技術力があるというだけでなく、自社のビジネスや文化を理解し、長期的な視点で伴走してくれるパートナーかどうか評価する必要があります。

安心してRAG構築を進めるなら「ニアショア機構」へ

RAG構築プロジェクトを成功に導くためには、技術的な要素だけでなく、組織的な側面からのアプローチが不可欠です。

経営層からの明確なコミットメントと理解を得ること、ビジネス部門とIT部門が密接に連携し、共通の目標を持って取り組むこと、そして対象となる企業データに関する長期的な戦略を持つことが重要です。

そして、外部委託先を探しているなら、私たちニアショア機構を選択肢のひとつに入れてください。

ニアショア機構は、大手企業のRAG構築というニーズに対し、豊富な経験を持つ地方の優良開発会社をご紹介しています。

当機構の強みは、PoCからの小規模スタートが可能な柔軟性、多数のメディア紹介や500件以上の相談実績に裏打ちされた信頼性、そしてテレワーク開発に必要な専門教育を受けた正社員エンジニア(8,000名以上)が対応する質の高さです。

また、開発会社と直接契約できるため、透明性が高く、コスト効率も良い形でプロジェクトを進められます。

貴社の具体的なニーズ、保有データ、セキュリティ要件などを丁寧にヒアリングし、それらに最適なスキルセットと実績を持つ地方の優良開発パートナーをマッチングいたします。

まずは、RAG構築に関する貴社の構想や現在抱えている課題について、お気軽にご相談ください。

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