IT調達は、単なる購買活動ではなく、ビジネスの核心を握る戦略的なプロセスです。企業が持続可能な成長を遂げるためには、適切な外部ベンダーの選択とITソリューションの導入が不可欠であり、これによって新たなビジネスチャンスを生み出し、市場でのリーダーシップを確立することができます。
01人的リソース活用 or サービス活用の決定
IT調達プロセスを開始する場合に最初に検討すべき重要なポイントは、内部リソースを使うか、外部から調達するかを検討することです。開発に必要なリソースを正確に見積もり、それらを内部で適切に対応できるかどうか、あるいは外部に委託する必要があるかをじっくり検討していきます。
もし、内部リソースで十分な場合は既存のコストの範囲内で対応が可能ですが、特定の技術や能力が組織内にない場合には、外部の専門家やベンダーと連携することで、より効果的かつ効率的な対応を行うことが可能です。
外部ベンダーを活用する場合のスタートラインは、エンジニア人的リソースが必要なのか、サービスが必要なのかをまず考えることが重要です。
02コスト最適化の3原則を押さえる
IT調達におけるコスト最適化の3原則は「競わせる」「集約する」「入れ替える」です。
外部ベンダーを利用する場合には、複数のサービス供給者に「競わせる」ことで、コストとバランスが取れた質の高い提案を受けることが可能となります。
各社ごとに発注が分散している場合、1社あたりの発注量を増やしボリュームディスカウントを実現する、「集約する」という施策が有効です。特に景気後退時など供給サイドに余裕がない状況では、高い効果が期待されます。
一度選定された外部ベンダーも、「入れ替える」ことがありえる評価制度を伝達しておくことで緊張感が持続され、サービスの質とコストを維持することができます。
03外部協力先は広くアプローチする
既存のベンダーに頼りすぎるとイノベーションが停滞してしまう可能性がありますので、新しい外部協力先を探すために広範囲にわたる候補リスト(ロングリスト)を作成し、これまで接点のなかった企業にも積極的にアプローチすることが重要です。
企業サイズによってコスト感は大きく変動しますので、十分考慮する必要性があります。最近では、外注先を見つけるためのWebサービスも出てきており、積極的に活用される企業も増加しております。
04最適な契約形態の選択
外注する内容やプロジェクトの性質に応じて、全ての契約形態を柔軟に使いこなし、目的と予算に合った契約形態を選ぶことが重要です。マージンを含んだ契約コストは、派遣契約がコストは低いものの管理や指揮命令が必要となります。準委任契約や請負契約は管理工数や契約不適合リスクが含まれるため契約コストは高くなります。
ニアショア契約
企業が国内の地方システム会社へIT業務を委託する契約です。オフショア契約に比べて言語や文化、時差の差異がないため、コミュニケーションが容易です。 契約に関しても日本の国内法が適用されるのでリスクが少ないといえます。
オフショア契約
企業が海外のシステム会社へIT業務を委託する契約です。コスト削減や大規模体制の構築を目的とすることが一般的です。最近ではフィリピンやミャンマー等の国での活用も見られます。オフショア契約に関してはどちらの法域に準拠するのかを明確にし、契約の管轄裁判所を指定することが重要です。
ソフトウェアライセンス契約
ソフトウェアの所有者が利用者に対して、そのソフトウェアを使用する権利を付与する契約です。この契約により、ソフトウェアの使用方法や制限、権利と義務が定められます。使用できるデバイスの数、ユーザー数、使用場所などに留意が必要です。サポートの範囲も確認しておきましょう。
サービスレベル契約(SLA)
提供されるサービスの具体的な品質や基準を定める契約です。SLAは、サービスのパフォーマンス、可用性(例:99.9%の稼働時間保証)、応答時間、サポート対応などに関する期待値を明確にし、双方の理解と合意を確保するために重要です。SLAの基準を満たさなかった場合のペナルティや補償の内容も明確にします。
マネージドサービス契約
ITインフラや特定のITサービスの管理・運用を委託する契約です。この契約により、企業は自社のIT運用を外部の専門家に任せることで、コスト削減や運用効率の向上、負担の軽減、技術力の強化を図ることができます。サービスの範囲、パフォーマンス基準、責任と保証、準拠法などを特に明確にします。
クラウドサービス契約
クラウドコンピューティングサービス(IaaS、PaaS、SaaSなど)の提供に関する契約です。アクセス方法、データ保護、可用性、セキュリティ対策などが含まれます。
生成AIを活用したシステム開発により、開発の生産性が大幅に向上していますが、全業種でIT投資が盛んに行われており、エンジニア調達の重要性は引き続き維持される見込みです。偽装請負の是正により階層構造が見直され、集約化と逆に、小規模な外注先とも直接契約するマルチベンダー戦略が一般的になってきています。
従来型システムはクラウドリフトが進み、モダナイゼーションが進展しています。同時に、従来型システムのコストを最適化し、デジタルトランスフォーメーション(DX)領域への投資を増やす動きも見られます。コア領域では内製化を取り入れる傾向が強まり、ローコード開発の積極的な活用も進んでいます。
これらのトレンドにより、企業はコストの最適化を図りつつ、外注と内製のハイブリッドアプローチでエンジニアリソースの最適配置を行う必要が出てきています。