多くの企業がIT業務におけるオフショア体制を見直し、縮小や撤退を加速させる中で、ニアショアへの切り替えが進んでいます。その背景には、回避できない課題と新たな現実が浮き彫りとなっています。
オフショア主要国の為替についてみていきます。中国人民元/円のレートが切り上がっており、2020年に1元=約15.5円が2024年11月現在で1元=約21.5円と約39%アップしています。また同期間でベトナムのドン/円レートでは、1ドン=約0.0045円が0.0061円と約35%アップしています。
技術力に変化なくとも3万元の単価は、46万円から64万円に上昇しており数年前と同じ単価で作業依頼できる水準ではなくなっています。
この状況は、短期的にはコストメリットの希薄化が問題となりますが、長期的にも為替相場の変動によってコストの見通しが不安定になるため、IT予算の計画が難しくなります。
さらに、余裕を持った予算を用意したとしても、外的要因によって予算が大幅に超過するリスクが存在し、結果として企業が必要なIT化計画の凍結や、大幅な見直しを迫られる可能性があります。
令和4年5月公布(公布後2年以内に段階的に施行)されたこの法律は国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化などに伴い、安全保障を確保するためには経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大との背景から、この課題に対応するためのものとなり、対応策がIT技術にも関係することが想定されます。
オフショア活用をしている企業では、新たに公布された法律により国内に業務を切り替えることを決定し、具体的な推進策を考えています。しかし、首都圏エンジニアのコストが高いことや人材不足の問題から、希望する体制を整えることが難しいという課題が生じています。
米中貿易摩擦が大きな話題となりましたが、アメリカが中国への制裁として追加関税措置を行ったことが、中国産品を扱う日本企業にも影響を及ぼしました。
また中国の政治体制や制度の違いにより、日本では起こり得ないトラブルが発生することもあります。中国では知的財産権に対する意識が低く、模倣品や技術盗用が問題となっています。ソフトウェアのソースコードを強制的に開示させる制度も導入されたことがあります。
言語や文化の違い、タイムゾーンのずれなどがコミュニケーションを難しくし、プロジェクトの進行に支障をきたすことがあります。
開発作業によくある課題の一つとして、オフショアチーム内で日本語でコミュニケーションができるメンバーがごく一部しかいないことが挙げられます。このメンバーが要件を理解し、チーム全体に伝えるために翻訳する役割を果たしています。日本企業向けのシステムは要件定義書が日本語で作成されることが一般的であり、そのためオフショアチームは主に下流工程に従事しています。しかし、上流工程である要件定義などに対応できないこともあり、上流工程の理解不足から誤った成果物が生じるリスクがあります。
またシステムの運用保守作業では、決められた手順に沿って行う作業でも日々細かいレベルでは言葉でのコミュニケーションが不可欠となり、言語の違いによる問題で作業品質の低下となることがあります。
上記などの背景により、オフショアからニアショアへの移行で相談をいただく機会が非常に増えております。
オフショアからニアショアへの切り替えをスムーズに進めるためのポイントを以下に示します。これらを押さえることで、移行に伴うリスクを軽減し、より効果的な業務体制を構築することが可能です。
まず、現行のオフショア体制におけるメリット・デメリットを明確に分析し、なぜニアショアに切り替えるのかを具体的に定義します。コスト削減、安全保障対策、コミュニケーションの改善など、目指すべき目標を設定することで、移行の目的意識が組織内で共有しやすくなります。
適切なニアショアベンダーの選定は、成功の大きなカギを握ります。しかしながら、候補企業の抽出(ロングリストの作成)は、皆様が苦戦するポイントになります。
理由としては、国内のシステム会社のWebサイトには、企業力を見定める情報が圧倒的に不足しているという現状があります。評価すべき要素で、企業間の親和性、移行提案力といった点も重視する必要があります。
一度にすべてを移行するのではなく、段階的に業務を移行する計画の策定が効果的です。まず一部のプロジェクトや業務領域で試験運用を行い、両者の相違を最小限にしながら移行先ベンダーの力量を見定め、徐々に領域を拡大するのが望ましいと考えます。
オフショアベンダーからニアショアベンダーに切り替える際は、ユーザー企業が必ず間に入って、オフショアベンダーの協力を引き出す必要があります。切り替えられる側にとっては面白くない話なので、うまく協力いただくための支援契約などを締結するのも効果的です。
ニアショア移行後のパフォーマンスを定期的に評価し、業務効率や成果物の品質を向上させる取り組みを行います。KPIを設定し、改善策を実施することで、業務の質を持続的に向上させ、競争力を高めることができます。
これらのポイントを念頭に置きながら移行プロセスを進めることで、オフショアからの移行を円滑に進めることが可能です。
多くの発注企業はスタート段階の、条件を満たすニアショア企業を探すこと自体に苦戦されています。ニアショア機構では様々な強みを持つニアショア企業の情報をストックしておりますので、ニアショア企業の選定や移行に関するアドバイスやサポートをさせていただきます。
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